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zoom RSS 水島治郎『ポピュリズムとは何か』(中公新書)

<<   作成日時 : 2017/02/18 18:08   >>

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水島治郎『ポピュリズムとは何か』(中公新書)という本を読み終えた。本書は、昨年2016年12月25日の刊である。著者の水島氏は1967年東京都の生まれで、現在千葉大学法経学部教授だという。
本書の感想を一言で言うと、非常に良書だというものだ。

昨年、イギリスでEU離脱を問う国民投票が可決され、アメリカでトランプ氏が新大統領に当選した。これらはともに世界に衝撃を与える出来事だった。管理人自身がイギリスのEU離脱の方は接戦だと思っていたが、トランプ氏の方は、どのメディアもヒラリークリントン候補の優位を伝えていたので、非常に驚いた。イギリス・アメリカともに、両国国民の間に、日本に住んでいたのでは窺い知ることのできない感情が存在するのだろうと思った。
本書は、このように今の世界で話題になっているポピュリズムという現象について、南北アメリカからヨーロッパまで各国の事例を学問的に分析し、将来を展望しようとするものである。

まず著者は、ポピュリズムについて2種類の定義が存在するという。第1の定義は、固定的な支持基盤を超え、幅広く国民に直接訴える政治スタイルである。第2の定義は、「人民」の立場から既成政治やエリートを批判する政治運動である。
著者は、本書では後者の第2の定義をポピュリズムの定義として採りたいという。なぜなら、現在の世界各国を揺るがせているポピュリズムの多くがエリート批判を中心に下からの運動に支えられたものだからだ。
この定義を前提にすると、ポピュリズムには4つの特徴があるという。
第1に、その主張の中心に「人民」を置いていることである
第2に、人民重視の裏返しとしてエリート批判がある。
第3に、カリスマ的リーダーの存在である。
第4に、そのイデオロギーの「薄さ」である。
しかしポピュリズムの主張は実はデモクラシーと重なっているという。なぜなら、ポピュリズム政党は、国民投票や国民発案を積極的に主張する傾向があるからだ。ポピュリズム政党は、民主主義一般ではなく代表制民主主義を標的にしているのである。
では、ポピュリズムはデモクラシーの発展に寄与するのだろうか。著者は寄与する面と阻害する面の両面があるという。

著者は、以上のようなポピュリズムについての総論的考察を約30頁にわたり行った後、世界各国での各論的事例に入る。最初に歴史の中に現れたポピュリズムの政党は、19世紀末のアメリカ合衆国の人民党だった。その後20世紀中葉にポピュリズムがラテンアメリカを席巻するようになったとして、アルゼンチンのベロン大統領の事例とその政治の特徴が考察される。
その後ポピュリズムは下火になったが、21世紀に入ってから、西ヨーロッパ各国で躍進することになった。
ラテンアメリカのポピュリズムが多様な人々の解放の論理という特徴があったのに対し、現代ヨーロッパでは排外主義と結びついた抑圧の論理となったいる点に大きな違いがある。

この後筆者は、オーストリア、フランス、ベルギー、デンマーク、オランダ、スイス等の各国でのポピュリズム政党の台頭とその要因について分析する。
管理人には、フランス以外の各国でのポピュリズムについてほぼ無知だったので、これら各国でのポピュリズム政党の台頭に関する考察は非常に勉強になった。
これらの国々はそれぞれ内情が異なり、一般化するのは危険ではあるが、多くの場合グローバル経済の進展に伴う格差の拡大と、移民、特にイスラム系移民に対する国民の反感が、ポピュリズム政党台頭の背景にあることが分かる。また各国のポピュリズム政党の主張が、全くの暴論ではなく、それぞれの国で受け入れられるだけの内容を有していることも分かる。
さらに著者は最後に、ポピュリズム政党とのリベラル・デモクラシーとの親和性(彼らは多くの場合政教分離や男女平等を主張し、これらを認めないイスラムを批判している)、既に一時的なものでなく持続性を持った存在になったこと、既成政治の改革に寄与する面があるという指摘をする。

もちろん、こう書いたからといって、著者がポピュリズムを良しとしているわけではない。各国のポピュリズム政党を一般化することなく、それぞれの特徴特に台頭の背景と現実政治にどのような効果をもたらしているかを、冷静に学問的に考察し、今後の展望を語っている。

今は、出版社各社から毎月山のように新書が出版されている。管理人の考えでは、その中では中公新書に良書が多いように思う。特に国際関係をテーマにした中公新書の中で、読んで驚くくらいの良書と出会うことがある。具体例を挙げると、平野克己『経済大陸アフリカ』、大西裕『先進国韓国の憂鬱』、昨年出た遠藤乾『欧州複合危機』などである。おそらく優秀な編集者が存在するのだろう。
本書『ポピュリズムとは何か』も上記の各書と並ぶ良書であり、中公新書の大ヒット作だと思う。

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