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zoom RSS 村上春樹『ノルウェイの森』上・下(講談社

<<   作成日時 : 2017/07/15 17:15   >>

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今春、村上春樹の初期の短編集を何冊か(『中国行きのスロウ・ボート』『蛍・納屋を焼く・その他の短編』『パン屋再襲撃』など)を読んでみて、初期の村上春樹に興味を持ったので、『ノルウェイの森』を再読してみた。その時の感想を記事にしようと思う。

『ノルウェイの森』は言うまでもなく大ベストセラーになった作品であり、村上春樹のこれまでの作品の中で売上げの最も多い作品である。
管理人は1988年、ハードカバーで出てベストセラーになった時読んだ覚えがある。
あっと言う間に読み終えたという記憶はあるが、今一つ感動したり強い印象を受けたような記憶はない。
1988年というと管理人が社会人となって間もない時期で、仕事が忙しかった時期である。今から考えると、『ノルウェイの森』は土日で読み切って感動したものの、月曜からの仕事が忙しくて仕事に追われるあまり『ノルウェイの森』から得られた感動はすぐに薄れてしまった、ということだったのかもしれない、と思う。

今回再読してみて感じたのは、報われることのない恋の物語だということだ。

主人公(ワタナベ君)は、大学1年の春、自死した高校時代の親友(キズキ)の恋人だった直子と偶然再会する。直子とデート重ねるうち直子に思いを寄せるようになるが、その時直子は深く心を病んでいた。直子は京都の山奥にある療養所に入所する。
その頃主人公の前に、明るく純粋で天真爛漫な少女・緑が現れた…というストーリーだが、主人公の直子に対する恋愛は最も悲劇的な結末を迎える。そして生命力に溢れた緑の力によって再生を果たそうとするところで物語は終わっている。

主人公は、直子が自分の下を去って療養所に入所して以降、身の回りのことに全く関心が持てない。大学の授業を受けたりアルバイトをしていてもそれらに興味を持つことはできず(この辺り、男女を問わず、10代から20歳くらいの若い時代に深い恋愛をした経験のある方なら、共感できるのではないだろうか。管理人もそうである)、心はもっぱら直子に向けられている。友だちなどはできない。
ここで緑が登場せずに直子との恋愛が悲劇的な結末を迎えたら、本書は救いようのない悲恋の小説として終わっただろう。
しかし、緑の登場により、主人公の心理は少しずつ変化していく。純真で生命力に富んだ緑の力で主人公が再生への道を歩もうとすることで、救いがもたらされることを示唆して物語は終わる。

本書に関する読者の感想をネットなどで見てみると、本書に対する評価が真っ二つに分かれていることが分かる。
否定的な読者は、露骨な性描写に対する嫌悪感を上げる方が多いように思う。
管理人が読んだ感想では、本書では幸福なセックス・シーンはほとんどない。せいぜいラストの主人公とレイコさんとのセックスと、ラストに差し掛かる辺りでの緑とのオーラル・セックスくらいだ。それ以外は、満たされることのない、寂しく荒涼としたセックスをしているように見える。
主人公と直子とのただ一回のセックスもそうだ。

「最後には直子は僕の体をしっかりと抱きしめて声をあげた。僕がそれまでに聞いたオルカズムの声の中でいちばん哀し気な声だった。」(上・85頁)

その他の主人公が行きずりの女性と行うセックスも、決して幸福なセックスではない。直子への恋が成就しない寂しい気持ちを埋め合わせようとしてセックスをしているかのようだ。そして、当然のことだが、埋め合わせることはできない。埋め合わせることができるのは、緑だけだ。

セックス・シーンだけではない。本書には幸福な人生を送っている人物は登場しないように思う。緑は、恵まれない中高時代を送り、大学入学後も父親の介護をしている。持ち前の明るさと生命力で健気に生きているように見える。永沢さんという自信満々とした東大生の先輩に至っては、何かの強迫観念に突き動かされて荒涼とした人生を送っているように思える。

管理人は、『ノルウェイの森』を肯定する。恋愛という、人間なら若い時代に多かれ少なかれ経験する人生の一大事を真正面からテーマにした、そして単純に純粋に恋愛のみをテーマにした傑作だと思う。
村上春樹らしい比喩を多用した文体も、読んでいて心地良い。

本書は1988年の出版当時、「100パーセント恋愛小説」というコピーで販売されていたらしい。
うまいコピーだと思う。本書はもっぱら恋愛が描かれ、恋愛以外は何も描かれていない。



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