桐野夏生「グロテスク」(文春文庫)

桐野夏生「グロテスク 上・下」(文春文庫)という本を読み終えた。小説を読むのは数ヶ月ぶりのような気がする。ぼくはこの桐野夏生という人を、名前は聞いたことがあったが、この人の小説を読むのは初めてだった。どちらかというとミステリー分野で活躍してきた人のようだ。「グロテスク」は圧倒的な筆力で書かれており、上・下2巻に分かれているのに数日で読み終わった。

物語は、平凡で地味な女性で語り手である「わたし」、その妹で怪物といってもいいくらいの美貌を持つ「ユリコ」、「わたし」の高校の同級生で社会の掟に縛られ努力する愚鈍な「佐藤和恵」、やはり「わたし」の同級生で学年トップの成績を取る天才で努力家でもある「ミツル」、の4人の女性を中心に進んでいく。「わたし」の語りの途中で、ユリコの手記、中国人不法入国者張万力の上申書、佐藤和恵の日記が織り込まれている。「わたし」は、ユリコの美貌に対するコンプレックス、合格した女子高校で出会った中学からの内部進学生に対するコンプレックスを抱く。そしてユリコから逃れようとし、ユリコと、階級社会の仕組みに気づかない和恵に対し冷酷な気持ち・悪意を抱くようになり、2人を陥れようとする。これら4人の女性のやり取り、人物の造形や心理描写には迫力がある。
後半の和恵の日記の中身、大企業のエリートOLから最低の街娼(東電OL殺人事件がモデルになっている)に転落していく心理描写は圧倒的だ。ぼくは学生時代に読んだドストエフスキーの「二重人格」を思い出したりした(ただ「二重人格」の主人公が発狂していく様子はまだユーモアがあった。和恵が堕落していき、発狂も同然に陥っていく心理の方がずっと陰惨だ)。ただ最後の場面だけは少し不自然さを感じた。

ぼくは読み終わって、ずしんと重く暗い気持ちになった。ここ数年で読んだ小説(といっても大した数ではないですが)の中でも大きく印象に残る小説だった。

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