岩田規久男『「小さな政府」を問いなおす』(筑摩書房(ちくま新書))

岩田規久男『「小さな政府」を問いなおす』(ちくま新書、本年9月10日刊)という本を読み終えた。充実した内容だったので、勉強する感覚で傍線(ぼくはマーカーは使わないのです)を引きながら読んだ。そのため新書のわりには読み終わるまでに時間がかかった。

まず第二次大戦後の日本が「大きな政府」に至るまでの歴史をたどる。ここでぼくが新鮮だったのは、田中角栄内閣時代の政策が社会主義政策だったという記述である(もっとも田中元首相の政策が社会主義だったというのは、増田悦左「高度経済成長は復活できる」(文春新書)という本で述べられた考えらしい)。田中内閣が都市と地方の格差をなくす、弱者を保護するという社会主義政策を採用したため、多くの地方での公共事業や中小企業など弱者の救済政策が実行されたのである。そのため財政が肥大化し、「大きな政府」になってしまった。
ここで著者はミルトン・フリードマンにはじまる新自由主義思想が手際よく紹介し、新自由主義がめざすのは「結果の平等」ではなく「機会の平等」である、という。そして新自由主義に基づき小さな政府を実現し、経済を建て直したサッチャー政権以降のイギリスの例が紹介される。またその反対の例としてスウェーデンの「大きな政府」の紹介もされるが、スウェーデン型福祉国家については今後は予断を許さないという。

その上で、80年代以降の日本での財政再建・「小さな政府」をめざす動き(例えば国鉄民営化)と小泉内閣の実績について述べられる。筆者によれば、小泉政権の構造改革は、実は橋本龍太郎内閣の際に方向性が決められたものの延長が多いという。そして高速道路公団の民営化や郵政民営化などの不十分だった点が端的に示される。その上でポスト小泉の政策課題が示される。著者の述べる地方自治体の財政改革については、非常に説得的だと思った。また最後に著者の主張が端的にまとめられているのは、親切な設計だ。

著者が主張するのは、構造改革をさらに進めて効率的な市場と「小さな政府」を実現するということと、「機会の平等」の実現である。ぼくも全く同感だ。良い本を読んだという充実感が得られた。まもなく実現するであろう安倍内閣の経済政策について、本書を時々ひもときながら見守りたい。

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