伊東光晴「日本経済を問う」(岩波書店)

伊東光晴「日本経済を問う」(岩波書店)という本を読んだ。2006年11月29日の刊である。著者がこれまでに「世界」等の雑誌で発表してきた論文を中心に編まれた本のようだ。

ぼくは、学生時代の1980年代前半に、伊東教授の「ケインズ」(岩波書店=岩波新書)という本を読んだことがある。内容はもう憶えていないが、あの時がケインズ理論に接した最初だったのだと思う。卒業・就職してから、特にここ10年くらいの間に、市場原理主義とケインズ主義の対立を山というほど聞かされてきたわけだけれど、ぼくは基本的にケインズ主義の方にシンパシーを感じてきた。この「日本経済を問う」という本は、ケインズ主義の立場から市場原理主義を厳しく批判する内容となっている。

第1章(全部で5章になっている)で各国の事例を引いて、市場原理主義の失政を紹介した後、第2章で過去20年間が「不安定な時代」であったとして、銀行がバブルの発生を助長しその崩壊によって大きな痛手を被ったプロセスを検証する。第3章では過去の政府の景気対策、具体的には減税・低金利政策などがいずれも失敗に終わった理由を論証する。そして第4章で現在の財政破綻と所得格差の不平等を解決するために、所得税の累進度を元に戻すこと、さらに消費税の増税を唱える。また年金問題を解決する方策は、給付年齢を引き上げる以外にない、と主張する。そして終章で、アメリカ型の「ストックホルダーカンパニー」とヨーロッパ型の「ステイクホルダーカンパニー」の違いが紹介されている(もちろん著者は後者をよしとする)。

分析がやや粗いと感じる個所もあったけれども、全体として、読み応えのある、説得力の高い本だった。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 食品

    Excerpt: 食品 中国産こんにゃく粉を密輸入し関税などを免れようとしたとして、横浜税関は22日、関税法違反などの疑いで、食料品輸入販売業「新和貿易」(東京都豊島区)を横浜地検に告発した。業者は容疑を認めていると.. Weblog: どうなる日本の経済 racked: 2010-01-24 02:32