長谷部恭男 杉田敦『これが憲法だ!』(朝日新聞社)

長谷部恭男 杉田敦『これが憲法だ!』(朝日新聞社=朝日新書)という本を読み終えた。長谷部恭男氏は東京大学教授で専攻は憲法学、杉田敦氏は法政大学法学部教授で専攻は政治学である。本書はこの両者の対談という形式を取っている。なおぼくは長谷部教授の著書は『憲法と平和を問いなおす』(ちくま新書)、『憲法とは何か』(岩波新書)の2作、杉田教授の著書は『デモクラシーの論じ方』(ちくま新書)を読んだことがある。

長谷部教授という人は、この『これが憲法だ!』という本の「まえがき」「あとがき」から想像すると、現在の日本の憲法学会の第一人者のようだ。本書は長谷部・杉田の両教授の対談という形をとりながら、実際には、杉田教授が立憲主義、憲法9条などさまざまな憲法をめぐる問題について、長谷部教授の考えを問い質していく、という内容になっている。両者の議論は、「これが憲法だ!」という題名に反して(?)、高度でアカデミックなものだ。

長谷部教授の学説はかなり独特だと思う。ぼくはいちおう法学部の出身だけれど(ただし四半世紀近く前のことです)、ぼくの学生時代は、ホッブス、ロック以来の憲法思想史、またはアメリカの裁判例から、憲法学にアプローチするという立場の憲法学者が多かったように思う。しかし長谷部教授は、法哲学上の成果を大きく踏まえて憲法学にアプローチしている。そして立憲主義のポイントは公と私を分ける点にある、なぜなら現在は多様な価値観が存在しておりこれらは両立不可能だから、各人は私的な領域においてはどんな価値観でも保障されなければならないが、公的な領域においては公的な利益を追求するため私的な領域での価値観の対立を棚上げしなればならないからである、というような独特(?)の見解を唱えている。さらに憲法には「準則」と「原理」の2種類の規定が含まれているとか、憲法は「調整問題状況」を解決するためのものだ等、一般には理解されていない見解が述べられている。
これに対し杉田教授の問題提起は、我々一般人の理解の範囲内にあるもので、一般人の理解を突き詰めて考えた結果の問題提起、という印象を受ける。
そして憲法改正については、現状では不必要。その理由は、9条に関しては現在の政府は内閣法制局の憲法解釈に従って行動しており、内閣法制局の憲法解釈には信頼が置ける。9条以外の問題点については現在の憲法のままで対処できるので、改正の実益がないというような論議がなされている。

対談形式で一見読みやすそうだけれど、難解な部分もあり、読み応え十分だった。特に長谷部教授の議論には、ぼくのような一般人は考えもしないようなことが多く述べられており、非常に頭の良い人だという印象を受ける。安倍政権下において、憲法改正問題が現実的な課題となっている昨今の政治情勢の下では、読んでよかったと思える1冊だった。

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