桐野夏生『I'm sorry, mama.』(集英社文庫)

東京は今日もまた晴天、昨日よりさらに暖かく小春日和といっていいような一日でした。今日は息子は一日中塾で、妻とぼくは昼間、買い物を兼ねて隣駅まで行き、スターバックスでしばらく時間を過ごしました。

先週20日にぼくの好きな桐野夏生さんの『I'm sorry, mama.』という小説が文庫化された(集英社文庫)ので、この連休に読んでみました。

この小説の主人公は、「松島アイ子」です。小説では「アイ子」の外見は次のように描かれています。
「四十過ぎか。女子プロレスラーかと思うほどガタイが大きく、やや太り気味。肩まで伸びた髪は、本来の髪と金茶に染めた部分とがくっきりと二分され、それも数年間は染めていないらしく、黒髪の部分の方が長くなっていた。オレンジ色のTシャツの上に黒いキャンパス地の薄汚いエプロンを着け、顔には白めのファンデーションを塗ったくっているのに、Tシャツと合わない真っ赤な口紅は剥がれかけている。…」

外見だけではありません。登場人物の1人はアイ子の人物像について次のように告発しています。
「私は女の顔をした悪魔を1人知っているのです。その女のしたことを考えるだけでぞっとします。…彼女は正真正銘の大嘘つきです。泥棒です。放火魔です。詐欺師です。そして世にも怖ろしいことに人殺しです。これまで、いったい何人の人を殺したのか、その数は誰にもわかりません。いいえ、彼女自身にもわからかくなっていることでしょう。…」

このように彼女は徹底して醜悪な殺人鬼です。極悪人です。あのリチャード三世ですら真っ青になるほどの悪人です。
この物語でアイ子は、最初に自分が養護施設にいた時代の保育士とその夫の夫妻を放火して殺害し、その行く先々で殺人、誘拐などの悪事を重ねていきます。
アイ子が行く先々で出会う人々は、俗悪で偽善に満ちた人ばかりです。物語が進むにつれ、アイ子が新たに出会う人物はだんだん醜悪になっていくようです。これらの人々がアイ子の被害を受けていくのを読み進むにつれ、だんだん爽快に感じられていくほどです。

なぜアイ子はこのようにあちこちで事件を引き起こし、世の中を怨み、怒っているのでしょうか。それはだんだん明らかになっていきます。

この小説は内容が内容だけに、読んでいて抵抗感を感じる人も多いと思います。しかし世の中の醜悪な面、人間の醜悪な側面を真正面から描いた稀有な小説ではないでしょうか。全体に流れるユーモアがのど越しを柔らかなものにしています。読後感も決して悪くないと思います。桐野さんの(最高傑作とはいえないとは思いますが)傑作の1つだと言えるのではないでしょうか。

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