猪木武徳『戦後世界経済史』(中公新書)

猪木武徳『戦後世界経済史』(中央公論新社=中公新書)という本を読み終えた。
本書は本年5月25日の刊である。また本書は中公新書のちょうど2000番に当たる。
2000年代に入ってから多くの出版社が新書市場に参入したが、中公新書は岩波新書、講談社現代新書とともに古参的存在である。各社が毎月多数の新書を出版し、それらが玉石混交と思われる中、中公新書はコンスタントに良書を提供し続けているのではないだろうか。
その中公新書は2000点に到達したことを素直に喜びたいと思う。

本書『戦後世界経済史』は、記念すべき2000点にふさわしい出来映えだった。
考えてみると、題名の「戦後世界経済史」とは壮大なテーマである。個々の論点をもれなく述べていこうとすれば、大著が何冊も出来上がるに違いない。それを新書1冊にコンパクトにバランスよくまとめるには、著者に相当な力量と労力が要求されるはずである。本書は370頁を超え、新書にしては異例に長いが、それでも戦後の世界経済史を新書1冊にまとめるという要請によく応えていると言えると思う。

本書を通読して、1編の大河小説を読み終えたような思いに捕われた。
第2次世界大戦直後の復興期から、1950年代~70年の経済成長の時代(黄金時代)、1970年代初頭のプレトン・ウッズ体制の終焉よ第1次石油ショックの発生による70年代の景気低迷期、80年代以降の新自由主義を中心にした景気の建て直しと、歴史ドラマを見ているかのようだ。
本書はアメリカや西欧諸国やロシア、中国だけなく、旧東欧圏についても、ポーランド、チェコ、ハンガリーと各国ごとにその直面した経済状勢や取られた政策の当否について検討している。メキシコ、ブラジル、アルゼンチンという中南米諸国についても同様だ。これらは中々得られない知識ではないだろうか。

そして最後に人的資本すなわち人間の知的・道徳的な質が経済成長にとって最も重要であり、それゆえ教育がこれからの経済成長にとって最も重要な要因だという結論に行き着く。
ぼくにとっては、全く同感だ。
現在、大学教育の是非が論じられ、学生たちの多数が目標を持って勉学に励んでいるとはとうてい言えない日本にとって、ずしりと重い結論だろう。



戦後世界経済史?自由と平等の視点から (中公新書)
中央公論新社
猪木 武徳

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