佐和隆光『グリーン資本主義』(岩波書店)

この連休に佐和隆光『グリーン資本主義』(岩波書店=岩波新書)という本を読み終えた。著者の佐和氏は1942年生まれ、現在、立命館大学大学院教授である(京都大学教授を長く務められた)。本書は昨年2009年12月18日の刊である。

ぼくが佐和教授の本を初めて読んだのは、1980年代前半の学生時代のことだった。岩波新書から出た『経済学とは何だろうか』という本だった。
ぼくは経済学部生ではなかったが、同書で述べられていた、経済学が日本に受容された歴史とか、(少なくとも当時)経済学部で教えられている事柄と、実社会での経済政策とか経営とは別物だというような論述は、たいへん興味を持って読んだのを覚えている。

それ以来ぼくは、佐和教授の著作のうち、新書で出たものはだいたい読んできた。2000年代に入ってからは、『市場主義の終焉』『日本の「構造改革」』(ともに岩波新書)、『この国の未来へ』(ちくま新書)を読んだ。

さて本書『グリーン資本主義』は表題どおり、地球環境問題について説くものである。

佐和教授というと、イギリスのブレア政権で実行された「第三の道」政策の主唱者として有名なのではないだろうか。「第三の道」政策とは、第二次大戦直後の世界で主流だった高福祉国家とも、イギリスのサッチャー政権やアメリカのレーガン政権で実行された市場原理主義とも違う、「第三の道」という意味である。具体的には、両者の長所を取り入れ、市場主義の立場を取りながらも、セフティー・ネットを充実させ、教育や医療を重視する、というものだ。
佐和教授は実際、ブレア政権のブレーンを務めた世界的な社会学者、アンソニー・ギデンズの『第三の道』(日本経済新聞出版社)の翻訳者であり、自ら「第三の道」政策に関する著作も多い。

しかし佐和教授は、その一方で地球温暖化問題についての日本での権威でもある(その方面での著作として『地球温暖化を防ぐ』(岩波新書)がある。
本書『グリーン資本主義』は佐和教授の温暖化問題についての顔が前面に出た著作である。

佐和教授は本書で、20世紀は「石油と電力の世紀」であり、裏返せば「二酸化炭素排出の世紀」であったという。そして地球温暖化が目前の脅威となった21世紀は、「二酸化炭素削減の世紀」でなければならないという。
一般、特に経済界には、二酸化炭素削減と経済成長・企業の利益成長が矛盾するという考えが多い。しかしこれらは決して矛盾するものではない。21世紀において、企業、広く経済は、グリーン・エネルギーの開発・普及を通じて成長し、雇用を創出することが可能であり、そうでなければならないと説く。そしてアメリカのオバマ政権を高く評価する。その語り口は、熱い。
そして政府の施策としての環境税や排出枠取引について、コンパクトに紹介がなされている。
昨年、トーマス・フリードマン『グリーン革命』(日本経済新聞出版社)という本を読み、アメリカをはじめとする世界各国でグリーン・エネルギーをビジネスとして成り立たせようとする動きが現れたことを知ったぼくにとっとは、具体的に納得できる話だった。

本書は佐和教授自らが「一気呵成に書き上げた」と述べるだけあって、内容がやや荒く、同教授のこれまでの著作との重複もある。
だが内容は非常に説得力がある。読んでいて、「これからの世の中はこうでなければならない」という気持ちが湧いてくるような本だ。

一般の社会人や大学生に広く薦めたい1冊だ。

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