松原隆一郎『日本経済論』(NHK出版新書)

松原隆一郎『日本経済論』(NHK出版新書)という本を読み終えた。著者の松原氏は1956年、神戸生まれで、現在、東京大学大学院総合文化研究科教授とのことである。本書は本年2011年1月10日の刊である。

本書は『日本経済論』というタイトルだが、内容は経済に止まらない。

すなわち本書の章立てを見ると、
 序章 「国際競争力」という幻想
 第1章 「経済」をめぐる迷走と論点
 第2章 「国際関係」をめぐる迷走と論点
 第3章 「民主党政権」をめぐる迷走と論点
 第4章 「安心」をめぐる迷走と論点
 第5章 「公共性」をめぐる迷走と論点
 終章 論壇はどこに向かうのか

となっており、経済のみに止まらず、国際関係、民主党の政策、リスク、公共性というテーマが各章で論じられている。その上、どの章でも「はじめに」という節が設けられ、その中で問題提起がなされた上で、さまざまな論点について論述がなされ、そして各章の最後で「まとめ」という節が置かれ、そこで各章で論じられた内容及び著者の主張が端的に述べられている。
したがって、本書は中身が非常にまとまっている。昨今多い、言いたい放題書かれたような安易な新書本とは一線を画しているといえる。

また著者の主張も、バブル崩壊後の自民党政権下で公共性が崩壊したが、民主党政権は、現金をばらまくことによって景気を浮揚させようとしたり弱者を救済するのではなく、新たな公共性を創出するための財政を支出しなければならない、という点で一貫している。

また何から何まで民間に任せるべきではなく、汚染した環境の修復や、新しい公共性のマネジメントのためには、公共の役割が求められるという、言われてみると当然の主張が、具体的な例を挙げながら説得力を持って語られている。

個人的には、構造不況業種の最たるものと思われている地方の中小の建築会社が、その知識や技能に基づいて、災害時の緊急出動において自衛隊よりも重要な役割を果たしているという点は、ぼくの知らなかった点で、こうした著者の言葉で言う「準公共性」の重要性を改めて教えられた。

本書にはマニフェストの変更を当然とするなど、ぼくにとって異論を唱えたくなる個所もないではないが、現在、たった今、日本の直面している各問題点をバランスよく提示し、著者なりの解決策をも述べた、好著だと思う。

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