ブロムシュテットのシューベルト「交響曲第9番『ザ・グレイト』」


今日の東京は雨が降ったり止んだりの典型的な梅雨の1日です。

今日は、シューベルトの交響曲第9番ハ長調D944「ザ・グレイト」を聴きました。演奏はヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデンです。1980年5月17〜19日のドイツ・シャルプラッテンへの録音です。

本曲はシューベルト最後の交響曲です。管理人がクラシックを聴き始めた1970年代には「天国的な長さ」と評されていたように思います。確かに本ブロムシュテット盤で約53分という長大な曲ですが、その後ブルックナーやマーラーの本曲以上に長大な交響曲がファンの人気を集めるとともにそのような評言はされなくなったように思います。
本曲はたいへん清朗な美しい曲です。管理人は本曲を聴くと、オーストリア・アルプスの美しい自然を思い浮かべます(と言っても管理人はオーストリアに行ったことがないのですが)。美しい花が咲き乱れる天国のような野原です。また耳を傾けていると、長大にもかかわらず楽想がこんこんと湧き出てきて止むことがない、という趣があります。シューベルト最晩年の弦楽五重奏曲や弦楽四重奏曲第15番と共通するシューベルト独自の世界です(と言ってもこれらの曲は、「ザ・グレイト」と曲の性格を異にしますが)。

ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデンの演奏は、ブロムシュテットが同オーケストラの音楽監督だった時代の録音です。いぶし銀と評された、柔らく、木目の肌触りのような質実な同オーケストラが全盛期だったと思われる1980年頃の音色を堪能することのできるものです。
管理人の考えですが、シューベルトやメンデルスゾーン、シューマン、ブラームスのようなドイツ・ロマン派の交響曲は、スーパーなオーケストラではなく、ドイツのローカルなオーケストラで聴くのがいちばん良いのではないでしょうか(ただしブラームスの交響曲第1番だけは、スーパーなオーケストラで聴くのもありだと思います)。ベートーヴェンの交響曲ならベルリン・フィルやシカゴ響のようなスーパー・オーケストラで聴くのは十分賛成できるのですが、ドイツ・ロマン派の交響曲は、ウィーン・フィルは別格ですが、ウィーン・フィル以外では、少々の演奏技術上の問題はあっても質実剛健さと素朴さを併せ持ったドイツの伝統あるローカルなオーケストラで聴くのがふさわしい要素があるように思うのです。具体的には、東西ドイツ合併後、インターナショナル化される前の旧東ドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団やシュターツカペレ・ドレスデンです。
コンヴィチュニーまたはマズア時代のゲヴァントハウス管弦楽団にはシューベルトの録音はないようなので、今日はブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデンで聴いてみました。

ブロムシュテットの指揮はがっちりとした堅固なものです。いわばカール・ベーム型の演奏です。管理人は「ザ・グレイト」というと往年のブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団による柔らかな春風駘蕩とした演奏が忘れられません。今日本録音を聴いて、もう少し流麗な演奏の方が好ましいように思いました。ドイツのローカルなオーケストラによる演奏では、本録音よりもオトマール・スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリンによる録音の方が良いのかもしれません。

しかし本ブロムシュテット盤は、全盛期のシュターツカペレ・ドレスデンの柔らかな音色でシューベルトを楽しむことのできる貴重な録音です。ブロムシュテットの指揮スタイルに多少の不満はあっても、指揮者の演奏スタイルよりもオーケストラの音色を重視する管理人にとっては、常に手元に置いておきたい名演なのです。

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