オイストラフほかのシューベルト「八重奏曲」

東京では昨日まで暖かな日が続いていましたが、今日の土曜は曇り空の寒い1日でした。
今週、残念な出来事がありました。管理人がチケットを取っていた、この3月のマルタ・アルゲリッチとギドン・クレーメルの来日公演の中止が発表されたのです。
管理人にとってアルゲリッチを生で聴くのは約35年ぶり、また彼女とクレーメルとの共演はこれまで生で聴いたことがないので、たいへん楽しみにしていました。なので、このたびの中止の決定は本当に残念です。ここ数週間の新型コロナウイルスの感染拡大の状況を見ると当然の決定で、覚悟をしていましたが…。
管理人はオーケストラ曲よりも室内楽を好んでいます。このたびのアルゲリッチ&クレーメルというビッグ・コンビの共演は、大袈裟に言えば、これからの人生のビッグ・イベントというくらい楽しみにしていました。残念な話ですが、これら両者が再び来日し共演する機会があることを信じたいと思います。

さて今日の一曲はシューベルトの八重奏曲へ長調D803です。
演奏は次の通りです。

ダヴィッド・オイストラフ(第1vn)
へーテル・ボンタレンコ(第2vn)
ミハイル・テーリアン(va)
スヴャトスラフ・クヌシェヴィツキ(vc)
ウラディーミル・ソロキン(cl)
ヨシフ・ゲルトヴィチ(cb)
ヨシフ・シュティーデル(fg)
ヤコフ・シャピロ(hr)

オイストラフとクヌシェヴィツキ以外は管理人の知らない名前ですが、往年の旧ソ連の名手ではないかと思います。
1955年10月27日の旧EMIへの録音です。

本曲はドイチェ番号で分かるように、シューベルトにとってそれほど若い時代の作品ではありません。ベートーヴェンの七重奏曲はベートーヴェン青年期の作品なのですが…。
1824年、シューベルト(1797ー1828)27歳の時の作品です。1824年というと、「ザ・グレート」のニックネームで知られる最後のハ長調の交響曲や歌曲集「美しき水車小屋の娘」が完成された後であり、シューベルトにとって晩年に差し掛かろうという時期の作品です。

本曲は全部で6楽章から成り、演奏時間が1時間近い大曲です。
各楽章の楽譜指定は次のようになっています。

第1楽章 アダージョ〜アレグロ
第2楽章 アダージョ
第3楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ
第4楽章 アンダンテ
第5楽章 メヌエット
第6楽章 アンダンテ・モルト〜アレグロ〜アンダンテ・モルト〜アレグロ・モルト

全体的に明朗・温和の楽想で、奏者たちがアンサンブルを楽しんでいる雰囲気が聴く者に伝わってくる曲想です。
変奏曲の形式が取られている第4楽章が、歌謡的でメロディーが美しく、最も印象に残ります。
また第2楽章の息の長い楽想も傑作だと思いますし、第5楽章の春の日だまりのようなほのぼのとした楽想、第6楽章の晴れ晴れとした曲想にも魅力を感じます。
本曲はあまり深刻な意図から書かれたものではなく、少年時代父や兄とアンサンブルを楽しんだという室内楽愛好家シューベルトが、器楽奏者に対して、管楽器を加えた通常とは異なる編成の楽曲を提供しようというサービス精神から書かれたのではないでしょうか。

オイストラフをはじめとする旧ソ連(?)の奏者たちによる演奏は、のびのびとした、いかにもアンサンブルを楽しんでいるという風情です。聴いていて心が和やかになる演奏です。
音も1950年代のモノラルのわりには良好です。
名演と言えるでしょう。

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この記事へのコメント

2020年03月08日 01:01
こんにちは、いつも大変お世話になっております。

アルゲリッチ/クレーメルという夢のようなコンビの演奏会の中止、言葉に出来ないほどのショックを皆様持たれた事と思います。

我が家もCDの注文を数か月は見合わせる事にしました。
喉から手が出るほど欲しいのですが、多くの流通過程を経る事に不安を感じての事です。

シューベルトの八重奏曲、とても大好きな作品です。
繊細で心の内へと向かうシューベルトが、明るく楽しい作品を作ると実にチャーミングで微笑ましいものになるのですから不思議です。

オイストラフたちの演奏が各楽章の日和に例えられた表現により、とても素敵な雰囲気で伝わってきました。

幸せなひと時を過ごせました。
ありがとうございます。
2020年03月08日 18:17
よしな様
コメントを頂き、有り難うございます。
クレーメル/アルゲリッチを聴けず残念ですが、先月聴いたムター/オーキスも開催があと1ヶ月遅かったら中止されていたはずで、運の良かった面もあると思います。
シューベルト「八重奏曲」、演奏する側も聴く側も楽しい曲で、両者ともアンサンブルを楽しむことができればそれでいいのだと思います。BGMとして聴くのもよい曲だと思います。