ルプーのシューベルト「ピアノ・ソナタ第20番」

東京は今日も秋晴れの1日でした。気温も1日の最高が20度台前半というたいへん過ごしやすい1日でした。
今日はラドゥ・ルプーの演奏するシューベルトのピアノ・ソナタ第20番イ長調D959を鑑賞しました。録音年月は1975年7月です。

シューベルトのピアノ・ソナタ第20番は、最後となった21番D960の直前に作曲されたもので、21番と同様演奏時間の長い大曲です。ルプーが両曲とも録音していますが、21番が演奏時間40分弱に対し、20番が約37分30秒と大差ありません。

それでこの20番がどういう曲なのかというと、ぼくは昔からもう一つ分からないでいます。特に第1楽章と第2楽章が分からないでいます。
第1楽章は劇的で緊張感に富み、第2楽章は幻想性と、歌曲の大家だったシューベルトらしい歌謡性がたいへん魅力ですが、両楽章とも若くして死を迎えようとしていたシューベルトの絶望感と苦悩が底に流れているのではないでしょうか。
第3楽章は、夢を見るように美しいスケルツォです。このスケルツォはかなり傑作だと思います。
第4楽章は、流麗なロンドです。シューベルトらしい美しいものに対する憧憬の念が現れているように思います。

この20番は、1980年代前半までは21番に比べると知名度の点で劣っていたように思いますが、80年代後半、ポリーニが録音を果たし、ブレンデルが再録音するようになって、実演・録音ともに急増したように思います。ピアニスト・聴き手ともに、この曲に21番に劣らぬ魅力を見出すことができるようになったのでしょう。

ルプーの演奏は、彼が30歳の時のもので、彼独自のクリスタルな音色で奏された叙情的・ロマンティックな演奏です。この曲の持つ叙情性を強調した演奏だと言えます。技巧の方も安定しています。ぼくとしてはたいへん満足できる演奏です。

以下は脱線ですが、このルプーというピアニストはここのところ録音が途絶えています。彼は90年代の前半に、シューベルトのピアノ・ソナタ21番と13番をカップリングした1枚と、シューマンの「子供の情景」「クライスレリアーナ」をカップリングした1枚という2枚のCDを録音しましたが、それ以来録音が途絶えています。実に15年以上も録音から遠ざかっていることになります。
彼はもともと録音嫌いだったわけでなく、80年代前半までは、DECCAに、シューベルトとブラームスのかなりの量の録音を果しているほか、メータと組んだベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲や、プレヴィンと組んだシューマン/グリーグを録音するなど、イメージと異なり、録音量はむしろ多い方だったと思います。しかし、85年頃を境にバタッと録音量が減り、90年代後半からは全く録音をしなくなったという感があります。
彼がなぜ録音嫌いに転じたのか、ぼくには全く分かりません。

しかしルプーは実演の方は、ほとんどがヨーロッパ内でのようですが、ある程度の活動を続けているようです。来日は2001年以来途絶えているようですが(ぼくのこの年、サントリーホールで彼のリサイタルを聴くことができました)、来年実に9年ぶりの来日が実現するようです。
かつて「千人の1人のリリシスト」というニックネームを付けられた名ピアニストも、もう60代の半ばに差しかかっています。来日公演を是非聴きに行きたいものです。

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