吉田修一『悪人』(朝日文庫)

吉田修一『悪人 上・下』(朝日新聞出版=朝日文庫)という小説を読み終えた。
本作は単行本・文庫累計で200万部を超えるベストセラーになっているらしい。また、妻夫木聡主演で映画化され、上映中らしい。

主人公の清水祐一は長崎県の漁村に住む若い土木作業員。子供の頃、実母に捨てられ、祖父母に育てられ、今も祖父母とともに暮らしている。
祐一は出会い系サイトで知り合った石橋佳乃という性格の悪い女性を衝動的に殺害してしまう。
彼は殺害後、馬込光代という佐賀県の紳士服店で働く女性と知り合い、激しい恋に陥る。そして光代に殺人を打ち明け、2人は逃亡に出るという物語である。
物語には不器用で愚直だが娘思いの佳乃の父・石橋佳男、正直で善良な祐一の祖母・清水房枝、軽薄な金持ち大学生・増尾圭吾らが脇役として登場する。

この小説のラストについては解釈が分かれるだろう。
個人的には、警察から逃れられないと覚悟を決めた祐一が光代の心の負担を少しでも軽くしようと、真実でない告白をしたのだと思う。
祐一自身も、房枝も、佳男も、善良に生きている人たちが救われない、終わり方だ。

本作で一つ印象に残ったのは、作品全体で使われる九州弁だ。ぼくは九州とは全く縁がないが、九州弁のは、東京弁や関西弁にない、独特の穏やかさ、暖かさ、リズム感があると思った。

ぼくはこれまで、吉田修一の作品は、本ブログでも取り上げた『パレード』(幻冬舎文庫)など数作読んだことがある(下記の自己TBを御参照下さい)。その中では本作がいちばん完成度が高いように思う。
また繊細な感情の描写とか、風景の描写といった点でもこれまでより数段進化していると思う。



悪人(上) (朝日文庫)
朝日新聞出版
吉田 修一

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悪人(下) (朝日文庫)
朝日新聞出版
吉田 修一

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