ボザール・トリオのシューマン「ピアノ三重奏曲第3番」

昨日、残念なことがありました。管理人がチケットを取っていた10月30日のサントリーホールでのメナヘム・プレスラー(p)とマティアス・ゲルネ(Br)の共演の公演中止の葉書を受け取ったのです(予定されていたプログラムはシューマンの「子供の情景」と「詩人の恋」でした)。理由はプレスラーの健康上の理由とのことです。
プレスラーは現在94歳。同氏の健康の回復を祈ります。

さてプレスラーと言えばボザール・トリオです。彼は1954年ボザール・トリオを創設し、2008年の解散まで54年の長きにわたりピア二スト兼リーダーとして活躍しました。いわば室内楽の達人です。
今日はそのボザール・トリオの残した録音から、サントリーホールで聞く予定だったシューマンのピアノ三重奏曲第3番ト短調作品110を聴いてみました。録音は1971年8月です。旧Philipsへの録音です。
ボザール・トリオはその50年以上にわたる活動歴の中でプレスラー以外のメンバーの交代はありましたが、本録音はプレスラー(p)、イシドーア・コーエン(vn)、バーナード・グリーンハウス(vc)という時代の録音です。メンバー的に見て、ボザール・トリオ全盛時と思われます。

シューマン(1810ー1856)は生涯に3曲のピアノ・トリオを作曲しましたが、いずれも「室内楽の年」と言われる1842年より遅く、第1番と2番が1847年、3番は1851年です。今日聴いた第3番はシューマンの晩年と言ってもよいような時期の作曲ということになります。

さて同曲は、急・緩・急・急の4楽章構成を取ります。第1楽章はもうシューマンならではの世界です。憂愁と情熱と何ものかへの憧憬が感じられます。ロマン的要素の濃厚な楽章です。
そして第2楽章が極めて美しく繊細に開始されます。ピアノの支えにのってヴァイオリンとチェロが美しい旋律を奏でます。しかし同楽章は唐突な感のある中間部によって美しさが損なわれてしまうように思います。
第3楽章はスケルツォですが、暗い情熱が感じられてよく出来ていると思います。第4楽章は明るく、ピアノとヴァイオリンのかけ合いが聴いていて楽しいです。
ただ本曲の最大の魅力は第1楽章と第2楽章の途中までにあると思います。

ボザール・トリオの演奏は、シューマンのロマン性を強調せず、本曲の魅力を客観的に純粋に再現したものと言えます。このようなスタイルはジュリアード弦楽四重奏団(ヴァイオリンのコーエンは、ボザール・トリオ加入前、ジュリアード四重奏団の第2ヴァイオリ二ストを務めていました)などとと共通するもので、アメリカ的な室内楽演奏スタイルなのでしょう。じっと聴いているとプレスラーのテクニックとリードに光るものを感じます。
管理人は若い頃ボザール・トリオのような客観的なスタイルに反発したこともありましたが、60歳が近づいてきた現在ではむしろこのような即物的なスタイルの方に共鳴します。

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